Fortuna Moon とは

神秘的な世界が身近になるコミュニティ

もう半世紀近くも前。私が西洋魔術や神秘学に興味を持った頃には、日本語の参考書籍はほとんどありませんでしたし、誰もがオープンに参加できる講座など夢のまた夢でした。それと比べると、最近はけっこう多くの精神世界書籍や講座が増えてきています。とはいっても、西洋神秘学の長い歴史と広大な裾野から見ればその量はまだまだ圧倒的に不足していて、いわば表層を引っ掻いているに過ぎない感じです。そんな状態の中やっと巡り会えた書籍で地道に勉強している人たちも、そこで抱いた疑問などを気軽に質問できる場所がなくて学習に行き詰まってしまうことが多いのではないでしょうか。

このような現状を少しでも改善するために、本格的な実力派占い師や、研究と研鑽を続ける神秘家の方々にも声をかけて、2015年に「Fortuna Moon」を立ち上げました。それ以来、真剣に神秘学や精神世界について学ぶ人に、正しい情報を楽しくお届けする講座やイベントなど多様な活動を展開しています。また、一般的な出版ルートには乗りにくいニッチな本格占い情報なども同人誌形式にて発表するなど、多角的な活動を通じて、真摯な学びを追求する人たちがフランクに交流し、同好の士との友情も育めるようなコミュニティの形成をも促したいと願っています。

でも日本にいながら、どうしてそんなに苦労して西洋の神秘学を学ぼうとするのか、あるいは学ぶ意義があるのか、という疑問を感じる方もおられるでしょう。その答えは一つではありませんし、実践している私の内部でも年月とともに変わってきた複雑な問題です。私の場合は「タロットが好きだから、西洋魔術や西洋占星術に興味を持ったから」といったシンプルなきっかけで色々と調べ出しました。同じような人はけっこう多いと思います。

タロットや惑星の象意という簡単そうに見えた入口から始まった旅は、西洋神秘学の深い歴史と広大で壮麗な迷宮へと続いていました。でもそこまでいくと、神秘学という分野を超えて、人種や文化の違いがあっても根底で共通する点などに惹かれたり、逆に文化の違いでなぜ衝突が起こるのか、といったことも新たな角度から考えるようになりました。こうして、占いなどで単に人間の深層心理を紐解くだけではなく、多角的な視点から人類の歴史や思想の学習もしています。結果的に、人種や性別といった表面上の違いにとらわれない生き方にも繋がってきたような気がします。

だから誰もが西洋神秘学を学ぶべきだ、などとは申しません。もちろん、学んだ結果だって違ってくるに決まっていますし、好みや向き・不向きといったこともあるでしょう。でも、せっかくタロットカードや西洋占星術が好きだと感じたならば、深遠で意義深い世界まで踏み込んでいってみるのはどうでしょうか? Fortuna Moon は、そのお手伝いをしたいと考えています。

ロゴマークについて

Fortuna Moon のロゴに描かれているのは、運命の女神テュケー。その名前こそギリシア語で「運」を意味する彼女は、都市の繁栄と運命を司るとされました。彼女の冠が都市の城壁になっているのもそれを象徴しています。ローマの神話にも、同様に運勢を擬人化したフォルトゥーナという女神がいましたが、その名前がやがて「運勢」や「富」を意味する英単語「fortune」の語源になりました。そして Fortuna Moon の名称もここに由来しています。

フルーツと野菜、パン、葡萄酒などが溢れ出る小枝細工のコルヌコピア
コルヌコピア (photo by Brad West on Unsplash)

運勢の女神はよく作物が溢れる角、コルヌコピアを抱えている姿で表されますが、これも古代ギリシアの神話に基づく象徴です。ゼウスが幼かった頃、彼を亡き者にしようとする父クロノスから隠れて、クレタ島の洞窟に匿われていました。そこで彼の乳母となったのは、アマルテイアという牝山羊。しかし、後に最高神となるゼウスのこと、ある日アマルテイアと遊んでいる際に力余って角を折ってしまったそうな。この折られた角にはアマルテイア自身と同様に滋養を与える神通力があり、あらゆる飲食物を自由に生み出す力があったとか。これが最も一般的なコルヌコピアの誕生譚だとされています。

それとは別に、西アジアやヨーロッパでは伝統的に、収穫した食物を角の形に編んだ籠に入れて運んだことも指摘されています。それがアマルテイアの伝説からヒントを取った形なのか、あるいは収穫に都合の良い形が伝説の素になったのかもしれません。どちらにせよ「豊穣の角」と呼ばれるのも理解しやすいでしょう。現代でも枝編み細工のコルヌコピアが収穫祭の飾りとして登場するところを見れば、人々の心に深く根を下ろした象徴なのがよく分かります。

ただ、こうした逸話を調べていると「自然の恵みの象徴ならば、大地の女神が持つ方が相応しいのでは」とも思えてくるでしょう。確かにその通り、デメテルなどもコルヌコピアを抱えている姿で表されることは少なくありません。なのにここであえてテュケーが抱えているのは、大地が与えてくれる収穫や恵みはあれど、それをたっぷりと享受できるか、あるいは少ししか手に入らないのか。そうした采配は運命の女神の手に委ねられている、というシビアな原理を忘れないため、ともいえるでしょう。

女神の背後を飾るのは、タロットの『運命の輪』に描かれている車輪ですが、その由来は中世の写本を彩った装飾画にあります。キリスト教の世界になってからも、かつては女神であったフォルトゥーナが運命の車輪を回す「運命の女王」として姿を現し続けました。そのため、カードに女神自身が描かれなくても、車輪だけでも運命の女神の力を示唆する名残になっているのです。

車輪を回して人々の運命を操る運勢の女王を描いた中世の装飾画
運命の車輪 (from Siege of Troy by John Lydgate)

車輪が回るとき、片側が上昇すれば、もう片側は下降していくもの。タロットカードの『運命の輪』の象徴でも分かるように、いったんは車輪の一番上、頂点に上り詰めたとしても、車輪が動き続ける限りいつかは一番下、どん底を味わうこともあるでしょう。運命とはそんな無慈悲な側面もあるということを、この車輪は雄弁に語りかけているのでしょう。

そして、彼女の玉座である「月」も、古今東西に通じて、常に変わりゆく自然の力の代表です。それと同時に私たち人間の内面世界、精神世界を示す象徴でもあります。とかく私たちは激しく移り変わる外界に影響されがちではありますが、それに翻弄されることなく自らの内面を静かに見つめ、変化の波を成長と実りへの過程として活かせるように努力を重ねていく。そんな気持ちが込められたロゴなのです。

活動方針

Fortuna Moon では、真剣に神秘学や占いを学ぼうと志す方々に、できる限り正確な情報をお届けする講座やイベントを開催していきます。そのために健全な金額を設定し、講師にもお客さまにも無理のない永続的な活動を計画していきます。また、これまで東京一極集中となりがちだった精神世界の不公平さを少しでも解消するために、日本国内各地を回っていくように努力します。

このような活動をしていく中で、講座を急遽キャンセルされざるを得なかったお客さまにも、二年間は Fortuna Moon 開催の活動に受講振替を提供するなど、柔軟な対応をとっていきます。また、柔軟さは提供する知識にも応用します。基本は西洋神秘学ではあっても、洋の東西を問わず真剣な学習と修行を続けておられる講師の方々をお招きし、偏りのない知識の普及を目指します。

さらに Fortuna Moon の講座やイベントで知り合ったお客さま同士の交流も妨げることなく、風通しの良いオカルト・コミュニティの形成に助力していきます。

みなさん、そんな Fortuna Moon を応援してください。

Fortuna Moon 代表 ヘイズ中村