水盤占いを知っていますか
古くて新しいテクニック
彗星や雷に神の意思を見てきた歴史は非常に長いものがありますが、それ以外に、日常のありふれた現象を利用して占いの回答とする方法もありますね。東洋では自然界の織りなす風景を易の卦に置き換える梅花心易があります。西洋にも同じような技術は多いのですが、タロットなど専用の用具が入手しやすくなるに連れて、記憶の片隅に追いやられてしまった感があります。でも、最近はオカルト映画などで取り上げられたりして、新たな注目も集まっているような。そんな占いの一つが「水盤占い」です。
実際、水盤占い以外にも西洋占術には「水」を使った占いが多いのです。例えば、水占いという分野だけでも、雨水占い、湖水での占いなどに細分化されているほど。さらに調べてみると、「聖なる物質」としての水という概念が、宗教史のいたるところに存在しているのにも気づきます。命あるものの中心となる重要さ、とらえどころがなく変化しやすい性質、感覚的で官能的な触感と視覚的特性などが繰り返し讃えられてきました。
そんな水は、今でも水晶占いなどに使われている「スクライング」というテクニックを生み出した媒体です。それ以外にも、水面に占いたいことや、自分の願望を語りかけて、そこで形成される波紋から答えを導き出したりしてきました。また、よくかき混ぜた水の入った容器に糸で吊るした指輪を浸すという技法もあります。これは指輪が容器の側面に何度当たったか、を回答の基礎にしていたようです。あるいはもっとシンプルに小石を水の中に投げ入れて、そのときにできた波紋から占ったり、水の色そのものを観測したり。
日本での水占いといえば、有名なのが京都の貴船神社で行われる水占(みずうら)でしょうか。おみくじを水に浮かべると文字が浮き出てきて、吉凶を判断するものです。でも厳密にいうと、お告げ自体はおみくじから来るので、水そのものの占いとはちょっといえないかも。
水の貴重性
こうしてみると、多湿な気候の日本と、乾燥した地域での「水」に対する受け止め方にはかなり違いがあるようです。日本では神社などでなんらかの術を施された水や、大きな滝などの水には一定の力を認めているように思えますが、対する西洋神秘世界では、水そのものに神秘的な力を感じているように見えます。それだけ水へのアクセスが大変だったのかもしれませんね。この辺りの詳しいことはもっと学術的な研究者の方にお任せします。
はなはだ大雑把に説明してきましたが、西洋ではこのように「水には神聖な何かを運ぶ、ほぼ無限の能力がある」とか、「水は人間が天国やそこでの住人にアクセスすることを可能にする」といった、水の神秘性への信仰に近い感覚があるようです。そしてそこから生まれてきたのが、今回のタイトルに選んだ「水盤占い」です。
その詳細は
水盤占いの仕組みはかなり単純です。専用の水盤を用意して、その中心に椅子を置いて座り、素足を水に浸してヴィジョンが浮かぶのを待つだけ、です。これは前述した、水がどこへでもアクセスするための鍵になれる、という力を利用したもの。では、どうして水が万物にアクセスできるのでしょうか。これは、プラスチックの発明以前は、たいていの容器からは遅かれ早かれ水が漏れ出すようになるので、そこからの連想だという、やや拍子抜けする理由がありますが、真相はわかりません。しかし、多くの神秘家や占い師たちがこの方法で未来を見たり、死んだ家族とコンタクトしたりしていたようです。
とはいえ、専用の水盤を用意できた裕福な人ではなくても、この水盤占いは可能でした。要は水に足を突っ込めば良いので、温かい季節ならば湖や小池に足を下ろすだけでもできましたし、さらに簡易化すれば、タライに水を組んでそこに足を入れるだけでも良かったのです。この簡便さも水盤占いが愛された理由かもしれません。
例えば、二十年ほど前に公開された映画「コンスタンティン」では、キアヌ・リーブス演じる主人公の魔術師コンスタンティンが、地獄にいくために洗面器にくんだ水に足を入れる風景が出てきます。この主人公のキャラクターにそってかなり無造作なシーンになっていますが、これも水盤を使って地獄を訪れてそこにいる人を見てくる、という技法に他なりません。
最近では、この水盤占いが、アロマセラピーに使うフットバスを利用して、少しずつリバイバルしているという噂も聞きます。そこでは、どんなアロマを使えばより明確なヴィジョンが得られるのか、も試行錯誤されている様子。そんな古くて新しい水盤占い、温かい季節になったら試してみるのも面白そうですね。ええ、冬に実行するとほぼ確実に風邪を引くので、ご用心、ご用心。