講座ビジネスの裏表

精神世界に覇道なし

コロナ禍のリモートワークの経験から、みなさん、気軽にオンラインで開催できるようになったからでしょうか。昨今、精神世界の講座がとても増えてきているように思います。講座が増えれば、多くの方が利用しやすくなって良いことだとは思います。しかし急激な変化には、必ず反作用もついてくるもの。今回はそうしたお話をしたいと思います。

正直にいってしまうとコロナ禍が精神世界に与えた影響として一番大きなものは、呆れ返るような数々の陰謀論の発生でしょう。とくに占い師さんたちの中には「ワクチンは政府の陰謀。ちゃんと占えばそれがわかるから、コロナのワクチンは打ってはいけない」などという摩訶不思議なことをおっしゃる方も。ここまでいってしまうと私にはもう理解できない世界なので、論考することは不可能です。でも講座の是非、ということになると、自分自身がおこなっていることなので、それなりに深く考えることができそうです。

様々な SNS では「本音をいえば精神世界の講座は儲かるし、受講生の完了具合に責任を取らなくてもよい。だからいくらでも気軽に儲けられる」といった意見を少なからず見るようになりました。そこには批判もあれば、賛同もあり、単なる冷やかしではなく、多くの方がそのように考えているという悲しい事実と、またそういうものなのだろうと諦めているムードが伝わってきます。とはいっても、それを黙って見過ごしているわけにもいかないので、ここでちょっと深掘りしたいと思います。

本当に儲かるのか

まず「精神世界の講座は儲かるのか」から。これは単純明快にお答えできます、っていうかシャウトできちゃいますね、儲かりません!!と。もちろん、講座代金はいただきますから、無報酬ではありません。お金が動くのですから、ある程度は儲かります。でもここでみなさんが主張しているのは、労働量に比べて高額に儲かる、ということなので、違う、という回答になるんです。たしかに、ちょっと見では占いの歴史や技法を教えるだけで高額の料金を取っている、と感じるのかもしれませんね。でも、そうした内容を生徒さんにまとめて話せるようになるまでに、いったいどれだけの時間と資料代を費やしたか考えてみたら、全然、割りに合いません。そこまで時間を遡らなくても、みなさんにお渡しする資料の作成一つとってもかなりの時間と労力がかかります。つまり、良心的にやろうとした場合の時間対収入、で考えたら儲かるお仕事ではありません。普通の占いをしていた方が楽なんです。

ここでガヤガヤと聞こえてくるのが「じゃあ、なんであなたは講師としてたくさんの講座を開催してるんですか、嘘つき!」という声です。本当にこのようなことを言われた経験もありますが、そのときはあまりに下品な言葉の羅列に呆れてしまったので細かな内容は覚えていません。なので詳細な反論はしません。単純にいってしまえば「一日に百回道を聞かれる毎日を過ごしていたら、それをどうにかしたくなるのは自然」だということ。私に何も訊かないで!と拒否するよりは、詳しくお答えしながらその時間に見合った代金をいただこう、と決心しただけの話です。

では次の「受講生の完了具合に責任を取らなくてもよい」に関して考えてみましょう。私も占い技法の講座を開催してはいますが、全員が必ず全てを習得できるようにはできません。そんな目標は非現実的で無理がありすぎますし、それを確約するのは別の意味で無責任でしょうし。頑張ってお教えしても、占い業界で生徒さん全員が食べていけるようになるわけでもありません。とくに仕事にしたいという場合は、私とご縁がある会社さまには紹介しますけれど、占い業界そのものが生徒さんの生き方に向いているかどうかは、占いの知識の有無とは全く別の問題だからです。

だからこうした場合は、必ず占い師として成功させる、のが責任の取り方ではなく、講座で何を教えたか、その内容はできる限り曲解されずに伝えられたのか、までが講師の責任ではないでしょうか?それ以上、生徒さんご自身の精神世界に干渉するべきではないような気もしています。

本当の責任とは

とはいっても、それとはまた別のレベルでの責任が精神世界での講座にはついて回るのも確かなのです。私がこの道にどっぷり浸かり始めた頃に、その道の大先輩が「これから古い魔術書の復刻や翻訳、占いの講座などのチャンスがくることだろう。しかし、軽く引き受けてはいけない。間違えて書き記したこと、間違えて教えたことはすべて君自身のカルマに反映されるからだ。自分一人が間違えるよりも、他の人を誤った道に誘い込む罪は深い」と諭してくれたのです。それ以来、何十年経っても、誰かに何かを教えるときには、まずこの言葉が頭の中で鳴り響いています。私の講座に出たことがある方は、私が「ごめんなさい、それは私にはわかりません」と回答するのを聞いたことがあると思います。そう、半端に間違った回答をするわけにはいかない、という覚悟のもとでの回答なのです。

だから私はちゃんと責任を取っている、無罪だ!などとは爪の先ほども思っていません。人間、何かをすれば必ずその反作用もあるものだからです。でも自分以外の人間に何かを教えるときに、その責任の範囲を過大に解釈してしまうとなると、それもまた生徒さんの生き方への過干渉にもなり得る危険があるのではないでしょうか。第三者の人生に土足で踏み込むわけにはいきません。

ひどい例を挙げると

またこうしたこととは全く別の次元で、あまりにも困った講座が開催されている実情があるようですし、差し迫ってはそれが一番多い問題でもありそうです。値段を高くつければそれだけで講座に箔がつく!などといって、無闇に法外な値段を設定する講師。かいつまんだ知識と適当な技法をちゃらっと教えて、あとはあなたの努力次第ですよ、できないのは心がけが悪いのよ、で逃げる講師。資料を読み上げるだけで、質問を無視する講師。さらには、そこそこ有名な講師の講座を受講して、そこでの資料をゲット。そして今度は半額以下の値段でその資料を元に自分の講座を開講し、そのまま他者の資料を横流しする講師、などなど。

私自身の経験でも、配布資料に書いてある私の名前をホワイトマーカーで消してコピーしただけで、それを元に講座をなさっている方がいるという報告を受けたことがあります。また、講座の内容を録音して、それを無断で配信されるとか。この配信事件のおかげで、それまで録音可だった私の講座は、録音をお断りすることになってしまいました。このような行動はおそらく「バレなければいい」とか「あの講師だってボロ儲けしているんだから、私が少しくらいおこぼれをもらってもいい」などといった浅ましい考え方からきているのは明白です。そのような思考パターンと行為は、その人自身の運気もカルマも落とすでしょうし、受講された方が気の毒だ、としかいいようがありません。

だから、これから何かの講座を受講しようと考えている人は、いくつかの点に注意してその講座の開催者を見極めるようにしてください。日頃、SNS などでその人をフォローしておいて、何気ない発言から違和感を感じないか、とか。他の人が開催している講座に比べて、あまりにも料金がかけ離れていないか。また、その人が日頃使っている占術と無関係な講座をいきなり開いていないか。そうしたことをチェックしてから講座を申し込むといいでしょう。できれば最初は、通常の講座より低価格で開催されることが多いオンライン講座やお茶会などに参加して様子を見るのがお勧めです。

はっきりとした形にならないものだからこそ、精神世界の学習はタイミングと相手を選ぶものです。後悔するよりは慎重に選んだほうがずっと良いと思いますよ!

著者について

ヘイズ中村は子供の頃から神秘の世界に魅せられ、長じて占い師、魔術研究家になりました。とくにトート・タロットに惹かれて『決定版・トート・タロット入門』も執筆しました。隙間時間には下手の横好きなレース編みをしたり、異次元に想いを馳せられるSF映画など楽しんだりしています。

ヘイズ中村は下記のサイトでも活躍しています。ご意見や質問などお待ちしております!