惑星の料理魔術
自炊すれば意外にカンタン
これまでの自分のブログを読み返してみたら、なんだか堅苦しいことばっかりだな、と感じました。実物の私はこんなに小難しいことばっかり考えているわけではなく、美味しいご飯を食べたり、友達とカンタンに作れるレシピを教えあったりして楽しんでいる、小太りのおばあさんなんです。ということで、今回はそんな等身大のヘイズ中村から、少し気軽に楽しめそうな開運法をお話ししたいと思います。
大空に輝く星々の中でも、他の恒星とは違った動きをする七つの星。古代の人たちはそれを「さまよう星」と呼びました。それが今でいう「惑星」という言葉の元にもなっています。厳密には太陽は恒星ですし、月は地球の衛星ではありますが、魔術的にはそれらも含めて、太陽・月・水星・金星・木星・火星・土星の全部をひとまとめにして「七惑星」として考えることが多いのです。トランスサタニアンと総称される天王星、海王星、冥王星はまだ発見されてからの年月が比較的短いことや、目視できないことなどから、あまり魔術には取り入れられていません。
古代から人々は惑星の力を自分たちの生活に迎え入れて、より良い何か、を得ようとしていたであろうことは、多くの古代秘教書や魔術書などからも明らかです。例えば、大きな戦争の前には、軍神マルスの加護を得るために、牛などの家畜を使って火星と同じような赤い血を大量に流す生贄の儀式も行われてきました。
時代が下るにつれて、そんな血生臭い星の魔術は実践されなくなっていきます。それに代わったのはソロモン系魔術などと総称される、さまざまな星のシジルを制作する魔術です。これで生贄こそ不要になりましたが、作成する護符の材質と作成時期が厳密すぎて、これまた別の意味で実践しにくい魔術です。例を挙げれば、ある木星の護符は蟹座に木星が入っている時期にしか作成できません。つまり、十二年に一度しか作成チャンスがないのですから、あまり実用的とはいえませんね。
でもがっかりしなくて大丈夫です!こうした大掛かりな儀式ばかりではなく、もっと日常生活の中で活用しやすい、惑星の開運法があります。それは「惑星ごとに決まっている色を活用する」という方法です。この方法は、マルシリオ・フィチーノによって紹介されたのが最初だとされています。
フィチーノの自然魔術
フィチーノは、イタリア・ルネサンスに活躍した人文主義者、哲学者、神学者でした。当時の豪商メディチ家の保護を受けて、プラトンなどギリシア語文献の著作をラテン語に翻訳する偉業を達成し、プラトン・アカデミーを運営した中心人物でもあります。近年はルネサンスの芸術思想をはじめ、魔術思想、神秘思想の面など多方面での彼の活躍が再評価され、あらためて注目を浴びている思想家にもなっています。さて、メディチ家など、裕福な後援者の庇護を受けていた彼は、そうした後援者たちの要望に応えるためか、好奇心や開運欲求は強いけれど、勉強や学習にはあまり熱心ではない人々(つまり、普通の一般的な人、ですね)向けに、さほど魔術色が強くなくて、実践しやすいこの方法を開発したのだろうともいわれています。彼のこうしたマイルドな魔術技法は「自然魔術」とも呼ばれています。
彼が提唱したのは、毎日一定の時間、目的とする惑星の色をつけた光を浴びながら瞑想する、という方法でした。当時は高価だった色付きガラスを通して光の色を変えるなど、お金持ちゆえに可能だった魔術ともいえそうです。この惑星色の魔法を、基本に忠実に、でももっと実行しやすく紹介してくれたのが、女性魔術師の草分け、二十世紀前半に活躍したディオン・フォーチュンです。
多くの書籍を残した彼女は、魔術書だけではなく、複数のオカルト小説を執筆したことでも有名です。そうした作品の中には彼女の魔術思想や理論も色々と投入されているのですが、そこで惑星の食事、というものが紹介されています。例えば、ミルク、白パン、白い豆の寄せもの(豆腐、でしょうね)で構成されているのは「月の食事」です。そう、月の指定色は「白」なのです。
惑星ごとの指定色
この惑星の料理は文字だけで見ると馬鹿馬鹿しく感じるかもしれませんが、実践してみると案外、効果が出るのです。参考までにここに七惑星の対応色と、対応効果をあげておきましょうか。太陽は黄色で、目的は主に健康と成功。月は白で霊感や感受性の増進。水星はレモン色で、情報処理能力やビジネス力の増進。金星は緑色で、もちろん恋愛運に効果大。厳しいこの世の中を勝ち抜くための勝負には、火星の燃え上がる赤を使いましょう。誰もが求める金銭その他の豊かさをもたらしてくれる木星には、紫色。そして安定や定着といった力を与える土星は、黒や茶色が指定色となっています。カバラ魔術などに使う惑星の指定色とはちょっと異なるところもありますが、気になる人は、双方の色を調べて使いやすい方、好きな方を使って構わないと思います。
紫色の食材なんてあるの?!とびっくりされた方もいるでしょう。でも落ち着いて考えれば、ワイン、茄子、ぶどうなどを思いつくはず。そう、こうして自然が私たちに恵んでくれている物事に気づくチャンスでもあるのです。そして火星のために使う赤色だって、マイルドな風味のトマトやイチゴを使えば、あまりカリカリすることはないでしょうし、逆に唐辛子などを使えば、より闘争心を掻き立てることができるでしょう。そんな自分なりの工夫を自由に加えて楽しめるのも、この開運法の面白いところ。色、風味、そして食材の取れる季節など、コンビニ弁当で過ごす日々では見過ごしがちな、様々な事柄を学ぶこともできるでしょう。
実践上の注意
この開運法を実行するときは、まずアレルギーなどの有無をよく考えてください。そして料理の段階から色のパワーを取り入れたいので、できるだけ自炊重視です。また地元の材料の方があなたの体に馴染んでパワーを取り入れやすいということも忘れないでください。魔術的には、わざわざ高いお金を払ってのお取り寄せなど無意味なのです。
そうして材料を揃えたら、該当の曜日にその食事を作ります。恋愛運を上げるために金星の食事を取るのならば、金曜日の朝・昼・晩をできるだけ緑色に揃えるのです。一日だけでは効果が感じられないと思うのであれば、次の金曜日までの計八日間、緑の食事を続けます。八日間続けるのならば、三食緑ではなく、一日一食は緑、程度でいいでしょう。
この技法を実行してみると、自分を構成してくれている多くの食物、他の生物の生命、特徴といったことを深いレベルで感じ取るようになります。別の言い方をすれば、あなたは自分の体全体と五感の全てを使って地球上に降り注いでいる惑星のパワーと触れ合うようになります。こうした過程が、あなたに深淵な変化と洞察をもたらしてくれるのは間違い無いでしょう。
ちなみに、この「惑星色の開運法」の真の意味を考えずに、食品着色料を水に溶かして飲むという手法を使っている人もいるようです。単なる色水を飲むだけで何かが変わるとはとても思えません。せめてフィチーノが勧めていたように、数時間の瞑想は組み合わせて欲しいものですね。
色が繋いでくれる、惑星との絆。こればかりは実践して感じてみないと説明はできません。自分はこの世にたった一人ぼっちなんだ、と思っている人ほど、やってみて欲しい技法でもあります。開運なんていう目先の目標を飛び越えて、自分が地球という大家族の一員であり、そしてさらに広大に広がる宇宙を構成する一部なのだ、と実感できるでしょう。そしてその絆こそ、様々な魔術技法の最初の一歩を導いてくれるものでもあるのです。