伝説の書を全解読!

決定版・西洋の魔術書

西洋神秘学に興味のある人ならば、きっと心が躍るであろう「魔導書」の世界。この本ではオリジナル書籍の出版年代、邦訳の有無、日本語版の出版社と出版年といった有益な情報が掲載されている上に、その内容もユーモアたっぷりにまとめられています。これまでは単なる伝説だとしか思っていなかった魔導書の世界が、ぐんと身近に感じられる不思議で面白い一冊です。

ヘイズ中村著『決定版・西洋の魔術書』の表紙
  • 著者: ヘイズ中村
  • 発行: 学研プラス / 2012 年
  • 体裁: B6 判ムック / 254 ページ
  • 内容説明
    • 奥義が記された書
    • 大魔術師の書
    • 悪魔に関する書
    • 錬金術や占いに関する書
    • 現代の魔術書とは
    • 魔女術のための書も
    • さらなる探究の書

ゲームやオカルト映画の世界ではなくてはならない存在であり、多くの謎を解く鍵としても紹介されることが多い魔術書。その中でもとくに、昔から伝えられてきた歴史のある書物、今では手に入りにくい書物は「魔導書」や「奥義書」と呼ばれています。こうした書物は現物がなかなか手に入らないことや、長い歴史の間に様々な逸話や噂、伝説なども創作されて、書物そのものが魔力を持っているかのように扱われたり、あるいは呪いの書物として紹介されたりして、より神秘的なヴェールに覆われるようになりました。でもこれらの本は決して単なる伝説ではなく、その時代ごとの最先端をゆく精神世界の書物でもあったのです。

本書ではヘイズ中村の豊富な蔵書と、海外のデジタル・ライブラリなどから様々な魔術書を厳選し、分かりやすく読みやすい読み物にしたてあげてあります。魔術を真剣に研究している人はもちろん、あ、これがあのゲームに出ていた魔術書なのか!と目から鱗の気分で楽しみたいカジュアルな魔術ファンにも喜んでいただけることは請け合いです。

魔術儀式の基礎を記した『ソロモンの大鍵』や、悪魔召喚で有名な『ゲーティア』、不老不死の秘密が記載された『黒い雌鶏』といった書物は、ほとんど伝説の領域に達している感があります。でもきちんと調査すれば、どれも実在の魔術書であり、そこには今でも納得できる魔術理論が入っていたり、あるいは正反対に首を傾げたり、ときには大笑いしてしまうような記載があるものも少なくありません。そんな意外な点も含めて、リアルな魔術書の世界を丁寧に紹介しています。

また18世紀末から始まった近代西洋魔術の復興がきっかけとなって、新たな魔術師たちも輩出されてきました。その代表的な立役者である、アレイスター・クロウリーやイスラエル・リガルディー、ディオン・フォーチュンなどの主要な魔術書も網羅し、魔術の実践に使える書物も紹介しています。西洋魔術に憧れている、実際に始めてみたい、という人のお役にも立てるでしょう。

錬金術そのものは、長い苦闘に彩られた失敗の歴史でもあるが、その苦闘が現代の化学知識の基礎となっていることは疑う余地がない。蒸留技術、火薬、硝酸や硫酸などは、どれも錬金術師の発明品なのだ

とかく学術的、歴史的な視点のみから語られがちな錬金術も、大きな括りの中では魔術として考えられるでしょう。ここでは錬金術の伝説と歴史的真実を区別しながらも、興味深い事実や逸話を多数収録しています。長い魔術の歴史は、いわば人類がこの世の中をどう整理し、どのように変化しようと努力してきたか、の歴史でもあります。そのような姿勢がより色濃く現れてくる錬金術にも親しみを感じていただけるのではないでしょうか。

そして広範な魔術世界をより深く理解していくために役立つ、宗教書なども最後にまとめて紹介してあります。小さなムックではありますが、それゆえに、西洋神秘学の面白くてためになるダイジェストとして使っていただける本でもあります。気軽に手に取って、見識を深めていただければ幸いです。

著者について

ヘイズ中村は子供の頃から神秘の世界に魅せられ、長じて占い師、魔術研究家になりました。とくにトート・タロットに惹かれて『決定版・トート・タロット入門』も執筆しました。隙間時間には下手の横好きなレース編みをしたり、異次元に想いを馳せられるSF映画など楽しんだりしています。

ヘイズ中村は下記のサイトでも活躍しています。ご意見や質問などお待ちしております!